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会報136号(2016.2)6頁

 (公社)富山県鍼灸マッサージ師会による会報136号(2016.2)6頁です。

高岡支部定期学術講習会

 高岡支部 安田庄内

 平成27年11月22日(日)午後2時から高岡市ふれあい福祉センターにおいて、第5回定期学術講習会が開催されました。

 例年のように高岡市医師会からの推薦をいただき、今回は厚生連高岡病院の循環器内科部長・木山 優先生を講師にお迎えして「動脈硬化性疾患の特徴」と題して講演していただきました。聴講者は32名でした。

 木山先生はプロジェクターを使って講演されたのですが、視覚障害のある会員にも分かりやすい説明をされ、あえてポインターを使われませんでした。

 木山先生のご厚意と北先生の協力により、高岡支部の学術講習会としては最初のネット配信となりました。

 内容は、主に脳卒中、狭心症、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症(末梢の動脈硬化)の症状や治療などについて話されました。

 最初は血管の構造について話され、動脈も静脈も三層構造になっているのは同じだが、動脈は静脈に比べて中膜(平滑筋)が厚く、四肢部の1mm以上の静脈には弁があるとの事です。毛細血管は一層の内皮細胞であり、酸素、二酸化炭素、栄養物、老廃物の交換をしているとの事です。

 動脈硬化はコレステロールによって内膜が弱くなり、内径が小さくなって血流が悪くなり、血圧の調整が難しくなるそうです。血管断面が75%以上細くなると症状が出てくるそうですが、心筋梗塞の人の6割は無症状であり、気がつきにくいとの事です。

 動脈硬化が原因となって発症しやすい疾患には脳出血、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症(上肢、下肢などの末梢動脈疾患)がありますが、動脈瘤も動脈硬化による疾患との事です。

 脳卒中の初期症状は「言葉が理解できない、しゃべりにくくなる、箸を持ちにくい、片眼が見えにくい、片側の手足が動きにくい、バランスが悪く歩きにくい」などです。前日とあきらかに違う症状が出るようですが、脳出血は頭痛が多いが脳梗塞は頭痛が少ないそうです。

 狭心症と心筋梗塞については、両者の大きな違いは「血管がつまっているかどうか」という事だそうです。

 狭心症は一過性のもので、胸部圧迫感があるが、冷汗や嘔吐は伴わないそうです。背中、顎、肩に痛みが出るが、ほとんどが左側で右はごく希だそうです。心臓は真ん中にあり、左側が痛むのは神経の分布によるもので、発作時でないと心電図は異常がない事が多く、分かりにくいとの事です。痛みが左や右に移動したりするのは心臓が原因でなく、ちくちくする痛みも違うとの事です。

 心筋梗塞は労作に関係なく前胸部の強い痛み、冷や汗、嘔吐を伴うのが特徴ですが、朝方8時〜10時、あるいは夜8時〜10時が多く、夜中は少ないそうです(東洋医学の子午治療に合致するように思いますが)。これは、朝は交感神経優位に移る時で血圧が上がりやすく、夜は残業などでストレスがたまりやすいからとの事です。

 基本的には冬(12月)が多く、8月は脱水症状により、3月は寒暖の差がはげしいからとの事です。

 閉塞性動脈硬化症(上肢や下肢の末梢動脈硬化)については主に下肢に、それも60歳以上の男性に多いそうです。手足のしびれ、冷感があり、色が悪いなど、左右の差を見て判断しやすいが、糖尿病によるものは左右差がない事が多く、ケガをした時に下肢切断になりやすい。

 また、進行すると間欠性跛行が起こり、更に進むと安静時も痛むようになる。閉塞性動脈硬化症で歩くと足が痛む人は、15年後の生存率は2割であり、5年生存率は大腸ガンとほぼ同じ6割で、かなり予後が悪い疾患で、早期に治療が必要との事です。

 間欠性跛行がみられる疾患に脊柱管狭窄症がありますが、これは安静時痛が少なく、歩行時痛は両足が多い。かがんだりする事で楽になったり、朝に痛んでも歩けば楽になる事が多く、腰痛を伴う事が多いそうです。

 閉塞性動脈硬化症は安静時痛があり、歩行時痛は片側が多く、休めば楽になりやすい。歩けば痛みが増し、腰痛はなく、しびれは下腿に多く、左右の温度差があるそうです。これらの症状を知っておけば両疾患の見分けがつきやすくなり、施術の参考になると思いました。

 木山先生は実際に次の検査法をしておられるそうです。

@足を上げて左右差を見る。血流が悪い方が白くなる。足を下げると普通は10秒で正常に戻る(赤くなる)。悪い人は1分以上かかり左右差が出るそうです。
A足背動脈は触知できる人とできない人がいるが、これは血管の走行によるもので、後脛骨動脈が触知できれば大丈夫である。膝窩動脈が触知できれば膝の上までは大丈夫。左右の筋肉量に差がある時は血流差があるかも知れないとの事です。

 以上のように、木山先生は疾患別の症状を分かりやすく説明されましたので、私たちが患者さんの愁訴に潜んでいる重篤な疾患を見落とさずに、早期に医師の診察を受けるよう勧める点からも大いに参考になりました。

 また、脳卒中など、動脈硬化性疾患の治療は、加齢、家族歴、男性、高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満、喫煙、運動不足、ストレスなどの危険因子を対象に行うとの事ですが、生活習慣病の因子と重なる点も多く含まれているので、努力すれば自分でもある程度防ぐ事ができる疾患のようです。

 また、後遺症が残った場合、機能回復を助ける一端に鍼灸マッサージが有効であると、木山先生は述べられました。

 今回の講習会で得た事を忘れないようにし、日頃の臨床に活かしていきたいと思います。

講演される木山先生
講演される木山先生