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会報135号(2015.7)8頁

 (公社)富山県鍼灸マッサージ師会による会報135号(2015.7)8頁です。

全日本鍼灸学会ふくしま大会に参加して

砺波支部 熊野知佳子

 5月22日〜24日に開催された全日本鍼灸学会ふくしま大会に参加してきました。私はここ十年程3人の子どもたちの出産育児に追われていたので学会で遠出するなんて久しぶりのことです。家のことはいろい ろ気にはなりますが、今回思い切って出かけてみました。

 今大会の開催地である福島では、福島県立医科大学会津医療センターに湯液と鍼灸を融合させた「漢方医学センター」が数年前から発足し、最先端医療を行う大病院の中で漢方(湯液+鍼灸)治療を行い、かつ鍼灸師の研修も行う、という新しい試みがなされています。
 これらを中心的に進めてこられた漢方医・三潴忠道先生は、かつて市立砺波総合病院東洋医学科の立上げにも尽力され富山にゆかりの深い方です。三潴先生のお話をお聴きしたい、というのが学会に参加した動機の一つでした。

 「鍼灸の復興を目指して」と題された三潴先生の会頭講演の内容は次のようなものでした。
 湯液も鍼灸も、 かつては日本の医療の中心をともに担っていたが明治期の政策によって衰退を余儀なくされた、その後湯液は医療保険制度に組み込まれて現在は多くの医師に普及したのに対し、鍼灸は医療保険制度から取り残され今なお病院などの医療機関で十分に活用されていない。大いに残念。
 医師が6年+2年+数年の教育・研修・ 臨床を経て一人前となるのに比べて、鍼灸師の教育、特に卒後研修は十分とはいえず、鍼灸を今後医療現場に活かしていくためにはこの点の改革が必要。
 会津医療センターでは鍼灸研修生を受け入れ、鍼灸臨床を学ぶのみならず、医師の研修に準じた研修、すなわち看護部ほか各診療科を回りながら現代医学を研修する制度を開始した。今後もこの方針で人材育成を目指していく。
 今日ここに集ったみなさんも、鍼灸の力をもっと医療に社会に活かすために、不遇を嘆くのではなく、鍼灸を生甲斐として、今日この福島から、力を合わせていきましよう。
 三潴先生の、鍼灸への愛と夢のあふれるきびしい言葉がとても印象に残りました。

 そのほか、さまざまな講座や発表が同時並行的に行わるためなかなか見きれないのですが、関心のある婦人科関係のセミナーや発表、被災地福島ならではの災害ボランティア関係の発表などをおもに見てまわりました。また、鍼灸学校時代の先輩に偶然お会いし、そのつながりからまたいろんな方々と言葉を交わす機会を得たりして実際そこへ足を運んでこそ得られる貴重な体験をすることができました。福島の地酒と看も美味しくいただきました。

 日頃は自分の鍼灸院を切り盛りするのがやっとの状態で、今後もそれは変わらないのですが、私も気がつけばもう20年もこの業界にいるわけで、自分の日常の延長に鍼灸業界のことを視野に入れていけるようになりたい、と思うようになりました。

 学会を終えて、日曜の夜遅くに帰宅すると、長男がまだ起きていて、開口一番「お母さんいなくても大丈夫だったよ」と言いました。まあいろいろ大変ではあったでしようが、家族にも慣れてもらって、今後も時々はこうして出かけたいと思います。

三潴先生と熊野先生
三潴先生と熊野先生